ネパールに着くや、いきなり水牛である。
いきなり、羊の肺や山羊やミノである。
毎日がダルバートかと思えば、駆けつけ内臓であった。
「水牛を食べにいきましょう」。
そう言って連れて行かれたのは、「ハラテイネワール(ネワール族の神様)」という店だった。
店主が名物だと勧めてくれた「焼鳥」が運ばれた。
緑色のソースにまみれたそれは、青々しいスパイスの香りとともに、辛さがずんと来る。
肉は相当手強い。つまり、噛んでも噛んでも消えていかないほど強靭な鶏肉であった。
次は「牛の胃袋ね」と、日本語達者な主人が勧めてくれたのは、ミノを揚げてスパイシーな味付けをしたものだった。
日本と違って、ミノは相当硬い。
顎に力を入れて、噛んでいかないとなくならない。
だがミノが含む甘い脂が揚げ油と出会って、下品の迫力が生まれるのだな。
次は来たぞ、水牛である。
初水牛肉である。
しかも生肉だった。
昔は役牛だったが、今その仕事はラマに取って変わったという。
ヒンズー教では他の牛を殺したり食べると、殺人と同じ量刑にされるが、なぜか水牛だけは許されるのだという。
まぶしてあるソースは、舌を拭っても、拭っても消えない痛みを発揮する。
ソースが強調されるせいか、水牛の味は目立たない。
だがその生肉は、きわめてしなやかで、和牛の刺身よりキメが細かく、鉄分感が弱い。
辛味の向こう側にほんのりミルクの味がして、危ない。
何かいたいけなものをいたぶっているような感覚になるからである。
お次は塩味の揚げ砂肝ときて、「羊の肺の衣揚げ」がやってきた。
砂肝は中華でよく出会うものが少しスパイシーになっている感覚である。
さらに肺は、ふわりとして味も淡く、優しい味である。
牛の肺よりクセがない。
続いて牛タンの油炒めを食べ、「なにかご飯物とかないの?」と聞くと、これを持ってきた。
米を潰して乾燥させた、「チウラ」という食べ物である。
こいつを料理の合間につまんで、ポリポリやるのがネワールの食文化なのだという。
味は何もついてないのだが、止まらなくなる。
続いてもう一つの炭水化物が運ばれた。
「サターマリ」、ネパールビザである。
米粉の薄い生地で、バリン問われる食感の上に、水牛の肉炒めと野菜、卵が載っていて、これにトマトベースのスパイシーソースをかける。
現地の人は、これに青唐辛子の刻んだのをのせて食べると聞き、試してみたら、舌の上が大火災となった。
そこで焼き鳥のソースをかけてみると、これがいい。
お次は、山羊の肉。
こいつも硬いが、臭みはなく、弾む肉を、噛めば噛むほど味が湧き出てくる。
そしてスープもきた。
「アルタマティ」という、ジャガイモと豆、発酵筍のスープである。
辛い! これは相当に辛い。
だが発酵筍の酸味にジャガイモと豆の甘みが合わさり、しみじみうまいのだな。
最後は、「パニールチリ」。
いわゆるインドのパニール(カッテージチーズ)を野菜とともにケチャップで炒めて、辛くしたものであった。
パニールは少し硬めで、魚肉ソーセージみたいな食感であり、その下品さがケチャップと合う。
最後はネパール餃子の「モモ」。
だが日本で食べるそれとは全く違う。
餡は、水牛と鶏肉で、かなり味が濃い。
それを、トマトとごまだれと豆のソースにつけて食べる。
散々食べて飲んで、三人で約6000円弱、肉の皿は一皿200円というから驚きである。
最後は、東京マラソンに何回も出たこともあり、瀬古選手と友達だというラマンさんと記念撮影。