那覇「鮨なかのや」

沖縄の魚を寿司に仕立てる。

食べ歩き ,

  • とがりえびす

  • オコゼ

  • アカマチ

  • イラブチャー

「鮨なかのや」の金ちゃんは、目黒の「いずみ寿司」出身で、詳細に解説する大将の横で握りを任されていた職人である。
独立して中延に店を構え、「いずみ寿司」譲りの痛風泣かせの肴攻撃で、酒飲みを大いに喜ばせていた。
しかし、一昨年店を閉め、一昨年末に故郷の沖縄で店を開いたのである。
コロナ禍の開店で、さらに沖縄の魚も工夫しなくてはいけないと、大変だったろう。
まだまだ軌道に乗っているとは言えないが、巧みに沖縄の魚を寿司ネタに仕上げている。
皮を香ばしく焼いたとがりえびすは、バリっと皮が弾けると、焼いたエビの香りが漂って、顔が崩れる。
アカマチは酢おぼろ漬けにして、海ぶどうをかまし、握ってくれる。
身が繊細で、甘みも淡い魚だが、おぼろの甘みに持ち上げられ、海ぶどうの食感に助けられ、なにやら甘味が膨らんでいるように感じる。
オコゼは、屋我地島の塩を最後にふる。
うま味の強い塩によって、おこざが持つ甘味が浮かび上がり、赤酢の酢飯とふわりと馴染む。
イラブチャーは湯引きして、塩締めし、ミソを引く。
これもまただらしないような、柔柔の魚だが、塩締めでグッと締まり、味噌の旨みの中からのっそりと魚の甘みが立ち上がってくる。
こうして、沖縄の魚を中心に寿司を仕立てる。
豊洲から寄せなくてはならない魚もあるが、こうした店こそ、地方の寿司屋に行く「価値」なのである。
すしなかのやにて