ブリオッシュを一口食べて、鳥肌が立った。
「闇パン屋」のブリオッシュである。
店はパリの7区にある。
しかし訪れても、パンは一つも売っていない。
予約注文のみで、客は電話で数量と種類を注文をし、店まで取りに行かなければならない(しかもリコンファームも!)。
店に行くと、mackey makimotoと手書きされた紙袋が二つ待っていた。
店主ヨアン・ラストル氏は、トゥール・ダルジャンでスーシェフを勤めた人だったが、「パテ・クルート世界選手権2012」で優勝したことをきっかけに、独立してシャルキュルトリー店を開いたのだという。
それゆえに店頭にはずらりと、パテアンクルートやブーダン・ブラン、リエット、フォアグラとリー・ド・ヴォー入りシューファルシなどが並ぶが、パン類は一切置かれてない。
どうやらThierry Delabreというパン職人と組んで、ひっそりパンを作っているらしいのである。
なぜ大体的にやらないかというと、その製法にある。
彼のFBには、その作り方も記されているが、ブリオッシュを作るのに、バターをあらかじめ20度で24時間置いておくか、18度で48時間置いておくかして、発酵バター感を高める方法を様々試行しているらしい。
まずブリオッシュを切ってみて驚いた。
ジェノワーズよりキメが細かく、均等なのである。
こんな断面のブリオッシュは見たことがない。
口を開ければ焼けたパンの香ばしさが広がって、目が細くなる。
噛めば、歯がしっとりと生地にめり込み、包まれていく。
その時、変な話だけど、京都「俵屋」を思い出した。
あの敷布団に体を横たえた時に、ふんわりと包まれながら体がどこまでも沈んでいく安堵感と同じ感覚が蘇ったのである。
バターは普通の倍近く入っているというが、バターの香りはそんなに強くなく、どこまでも優しい香りが漂う。
ほんわりと甘く、幸福感が体の底からせり上がって来る。
その瞬間消えた。
噛んだと思ったパンはするりと口の中から、溶けたのである。
甘美な余韻だけを残して。
パンドカンパーニュもとんでもなかったけどその話は、また。
「ヤァ」の写真は、店主ヨアン・ラストル氏と。
3人の写真はFBからお借りした。真ん中のメガネの主がThierry Delabreさんらしい。
「闇パン屋」のブリオッシュ
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