「辻留」で所蔵されていた、奈良時代に作られたという、銀製の箸と匙を見せていただいた。
当時はまだ中国の影響が強く、匙と箸で食べていた証拠でもる。
この後平安時代になって「碗」が普及し、日本は世界で唯一の「箸だけ食文化の国」となっていく。
なんでも中国(当時は隋・唐・五代十国時代)から持ち帰ってきた箸と匙ということで、考古学の樋口清之先生からいただいた貴重なものだという。
箸の、細く、すうっと伸びた姿が美しい。
また匙の柄のなんとも言えぬ曲線は、現代にはないエレガントを宿している。
ただし、汁物を飲んだり、すくったりするには慎重を要しそうで、食べ方がかなり上品になる。
そのことから考えると、やんごとなき方が使われていたのかもしれない。
箸は、理想の長さと言われる「一あた半」には、現代の身長から考えてもかなり長い。
ただし、各自の箸がの真ん中に並べられた料理の取り箸でもある中国の食文化を考えると、この長さが必要かと思われる。
こうした渡来ものの使いにくさが、次第に庶民に浸透していく過程で身度尺が導入されていったのかと思うと興味深い。
「辻留」で所蔵されていた
日記 ,