上等な下品。 <京都の平生>27

食べ歩き ,

「上等カレー」という名前の下品なカレーである。
つまりこいつを食べることは、矛盾を内包することであり、アウフヘーベンなのだ。と、わけのわからない理由をつけて、食べるコトを正当化した。


カツカレーはカレーをかけないでほしい。と思っても、上等カレーはべたがけである。
その願いが叶う余地は一ミリもない。
さらにカレールーが残らないように、食べ進むに従ってご飯を手前に前進させ、かつご飯でダムを作りながら決壊せぬよう注意して、立つ鳥跡を濁さずのカレーな、いや華麗な食後を目指したいが、通常の手前カレーと違い、上等カレーは全面カレーゆえに、それもできない。
アウフヘーベンは手強い。
カツは、5切れくらいまでは、まだカリッと音がして、これが揚げたてである証を証明しようとするが、6切れより先は、カツだとはわからなくなって、カレーとカツのカオスを楽しむようになる。


途中黄身を潰して、黄色い濁流と化したものをカレーと混ぜるが、カレーの味が濃すぎて、黄身の存在は発揮できない。
かくして上等カレーという名の下品カレーは、食べ終わる。
下品を目指すなら、ここは関西だし、イカリソースでも置いてもらっって、途中からかけ、さらに下品度を強めるという仕掛けを作ってもいいかと思ったが、それをしないことこそ、上等と名乗る矜恃なのかもしれない。
山科「得正」にて