《洋食おがた ミーツ サスエ&サカエヤ》VO7これこそが「ステーキ」である。

食べ歩き ,

《洋食おがた ミーツ サスエ&サカエヤ》VO7
肉を喰らう。
ステーキを食べる喜びが充満していた。
熊本阿蘇で放牧されている赤牛のリブロースステーキである。
緒方さんは、何度もアロゼしながら慎重に仕上げていく。
肉の水分はどれくらいか、芯部の熱の入り具合はどうか。
頭を巡らせながら油をかけて、肉をステーキへと昇華していく。
ステーキは、ただフライパンで肉を焼いたものではない。
牛肉を高みに登らせるために、人間が渾身の力と細心の感性で仕上げることである。
だからもう運ばれてきただけで、食欲の根源を煽る香りが漂って、居ても立ってもいられない。
ギシッ。
噛めば赤牛の雄叫が響いて、歯が肉に食い込む。
旨味が、根性のある旨味が溢れ出す。
根性のある旨みは、やわでない、剛健で濃い旨味である。
それが噛むほどに、膨らんで、我々を圧倒する。
さらに普通はあまり好ましくないカブリの脂も、締まって凛々しく、いやらしくない。
脂と肉体を噛み締める喜びを再発見する肉であり、ステーキである。
ああ。
食べるに従って、鼻息は荒くなり、体は上気していく。
自らの体に力が充満していく喜びを感じて、笑う。
大いに笑う。
これこそが、「ステーキ」である。