<駅弁勝負> 第30番 大船軒の「サンドウィッチ」のお作法

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<駅弁勝負第13回>


今日は大変である。
なにしろ6:50の電車ゆえに、6:20には東京駅について、駅弁を検討しなくてはいけない。
到着後「祭」に急行した。
だが朝から牛肉系や海鮮系はいただけない。秋の幕の内も検討したが、どれも1300円と高価である。朝食に高価な駅弁を食べて勝利するのは、うしろめたい。


そこで次は、「ニッポンの駅弁」に走る。ううむ、ここも豪華だなあ。
かといって、加島屋のおにぎりはもう一つだし、押し寿司関係も違う気がする。そこで紀伊国屋へ向かう。究極の海苔弁当、もしくはおにぎりと惣菜を買うかと悩んだが、レジが長蛇の列で回避した。
そこで、大船軒の「サンドウィッチ」である。


明治32年に登場した日本初の由緒ある駅弁サンドイッチである。
530円がいい。鎌倉ハムのボンレスハムとマスタードのサンドとチーズサンドというシンプルさで、パセリもなにも飾りがないのがいい。
虚飾のなさが、古き良き日本の誠実が出ている。
ハムサンド4切れ、チーズサンド2切れ。
人によってはこれはどう食べ進むのか、悩む人もいると聞く。ハムサンドで始まってハムサンドに終わりたい。だが交互に食べるとハムサンド2切れが続いてしまうじゃないかと。一切れ丸ごと食べようと思うからいけないのである。


① まずハムサンドを一切れ
② 次にチーズサンドを半分食べ
③ 次のハムサンド一口、チーズサンドを一口
④ といった具合に交互に食べて、チーズサンドの食べる量を調整する
⑤ 時には、チーズサンドとハムサンドを重ねて食べてみる。
⑥ 最後は、ハムサンドの二口でしめる。
⑦ お相手は午後の紅茶。
⑧ ゆっくり時間をかけて食べ進む。
⑨ 食後にコーヒーが呑みたくなるので、車内販売が回ってくる4~50分を計算し、その10分前頃から食べ始める。
⑩ 検札と乗降客に、優雅な食事時間を邪魔されたくないので、新横浜を過ぎてから食べ始める。


さあ次は勝負である。
通路を挟んだ席に、50男が座り、東京駅で座るなり、発車前に弁当を開けた。アウト。 駅弁は動いてから食べるものだろう。
列車の揺れが駅弁を生き返らせ、車外の風景が駅弁の調味であることを肝に命じなさい。
しかも「おにぎり弁当」JR東海パッセンジャーサービス。安易である。


今日も楽勝なりと思っていたら、新横浜から隣席に40代前半サラリーマンが乗ってきた。
彼も座るなり、袋から取り出した。ミックスサンドである。
コンビニで売っているような三角形三切れのパックである。飲み物はお茶。
合わんだろ。それをスマホいじりながら、3分で食べ終えた。


勝つには勝ったが、あまりにもあっけなくて情けない。
早起きして、東京駅で30分も悩んだこっちの気持ちをどうしてくれるんだと、今隣で寝ている彼に叫びたい。