朝六時に善光寺に出かけた。会社で病人が相次ぎ、占い師に見てもらったところ、善光寺で厄払いをしてもらいなさいといわれたゆえである。
間口五間に対して奥行き十四間と深い奥行きをもつ東日本最大の規模を持つ本堂が、朝もやをまとって屹立し、参拝客を睥睨している。
厄払いの申し込みをすませ待っていると、一山二十五院の住職と一山十四坊の住職たちが、お朝事のために次々とやってくる。
幾何学模様の美しい石畳の左側にかしずいていると、やがて、大勧進のお貫主と大本願のお上人(さまがおつきを連れていらっしゃった。
参道にかしづく我々一人ひとりの頭に南無阿弥陀仏と数珠をたれる。功徳をお授けになり、無病息災に過ごせるといわれる、善光寺特有のお数珠頂戴である。
内内陣に上がり、「お朝事」のに参加する。荘厳な雰囲気の中で執り行われているお勤め。
まず両脇に並ぶ住職たちが、おぉーおぉーとうなり声をユニゾンする。やがて十メートル奥、二メートル高の瑠璃壇の幕がするすると上がり、そこに位置するお貫主が「南無阿弥陀仏」と唱え、木魚が響き、お勤めが始まった。