ある日、どうしたことか「カレー南蛮そば」が食べたくなる。

食べ歩き ,

ある日、どうしたことか、突然に、「カレー南蛮そば」が食べたくなる。
頭の片隅に浮かぶと、もうどうしようもなくなって、昼食の予定があるのに、そば屋に飛び込んでしまう。
カレー南蛮が運ばれてきて思う。
インドで生まれしカレーは、よもや極東の地で、醤油だしと出会い、そばにまみれるとは、夢にも思わなかっただろう。
食べて思う。
なんと食べづらいんだろう。
片栗粉でとろみをつけたカレーの餡は、そばにのしかかり、そばは一致団結して重く、うまく手繰れない。
そこで勢いをつけてズルルッとすするのだが、今度は、とんでもなく熱い。
そのために、勢いをつけてすすりながら、同時に口を開け閉めして熱気を逃すという高度な技が必要となる。
カレー南蛮には、食べ易いものばかり食べていては、バカになるぞという教訓が含まれているのである。
苦労して食べる。
苦労の大きさほど喜びは大きい。とも、教えてくれるのである。
ここでさらに自分に試練を与えるために、七味をかける。
いっぱいかける。
食べにくい、熱い、辛いという三大苦が、自分を成長させていく喜びに変わっていく。
やがて食べ終える。
残った汁をそば湯で薄めて、しみじみと後味を楽しみ、そして思う。
デリーで出会った、インド人に食べさせたい。
羊膝カレーが大好物だった彼は、どんな顔をするのだろうか。