海の神秘が生む甘み。

食べ歩き ,

甘エビは名前で損をしている。

最初から甘いと決めつけないでほしい。

そう本人も思っている。

今では夏にも見かけるが、甘味をますのは冬だろう。

寒風にさらされる頃、金沢は近江市場の食堂に飛び込み、甘エビを頼む。

なにもつけずに口に放り込み、口をすぼませ身をしごき、ゆっくり押しつぶす。

外気を映したような冷たい身が、ねっとりと海の神秘を滲ませる。

そこには間違いなく、「甘い」という言葉だけでは計り知れない、命の躍動がある。