ホタルイカのしゃぶしゃぶ

食べ歩き ,

また福井にやって来た。
ホタルイカを食べるためである。
1時間前まで生きていたというホタルイカを、しゃぶしゃぶにして食べるのだあ。
山下船長の粋な計らいである。
透き通って、まだ一部命の鼓動が見えるホタルイカは、神秘の輝きを放っていた。
そいつを昆布出汁の中に入れてやる。
やがて、茶色く色づき始める。
そこを見計らって、何もつけずに食べる。
拙い命の発露が、ポタポタと舌に落ち、広がっていった。
食べてはいけないものを食べてしまった感覚に、うずく。
胴体からカプリといくのも良い。
だが僕は見つけてしまった。
目を取り、足からかじり、そのまま吸いこむようにして、胴体を口の中に誘導する。
すると卵というか肝というか、複雑な旨みが解き放たれて、恍惚となるのであった。