大勢の人が、ソース焼きそばを食べている。
30数人の客、全員ソース焼きそばを食べている。
「ズルルル」、店内に老若男女が焼きそばを食べる音が共鳴している。
高山の街を歩くと目立つのは、「飛騨牛ステーキ」に「ハンバーグ」、「飛騨ラーメン」、「手打ちそば」、「手焼き煎餅」なのだが、それらに交じって「ソース焼きそば」が目立つ。
駅前の「ちとせ」を通りかかったら、外まで行列である。
「ソース焼きそば」に行列である
「ソース焼きそば」に「名代」である。
並、もやし入り、肉入り、イカ入り、玉子(目玉焼きのせ)、海老入りとあり、上肉と上イカもある。ここは王道の「肉玉」を頼んでみた。
店内を見れば、餃子とソース焼きそばをシェアしている女子二人。
焼きそばと餃子、ラーメンを分け合う親子連れ。
仲睦まじくソース焼きそばを食べる、老夫婦。
大盛り焼きそばとスープを頼んで、一気呵成にほおばっている男子。
マヨネーズをかけた大盛り焼きそばをシェアする奥さん二人。
ここには、様々な焼きそば人生がある。
厨房をのぞくと、アルミの覆いで見えないが、ソース焼きそばを一手に作るのは、おばあさんのようである。
湯気に囲まれた頭が、リズミカルに動いている。
丁寧に作っているのだろう。ソース焼きそばは、ラーメンや餃子より遅い。さあ現れた。
濃い。色が濃い。
短い。麺が短い。
よくよく茹でてから丹念に炒めているのだろう。麺はちぎれて、3㌢ほどになっている。
味は濃い色の割には上品である。ソース焼きそばだから上品という事はないのだが、味が濃すぎず、するすると食べられるのである。
そこに豚肉とキャベツのうま味が加わり、一体化している。
お腹はすいていなかったが、さらりと食べられたのもそのせいである。
なにか食べ終わった後に、また食べられそうな気分になってくる。
それが「ちとせ」の魅力であり、人気の秘密なのかもしれない。
ご主人らしき男性に、聞いてみた。「上肉と普通はどこが違うんですか?」「柔らかい肉を使ってます」と言って笑う。
うむ、並でも十分柔らかいんだけど、これは今度「上肉」を食べるために、高山に来なくてはいけない。