トマトポタージュや虹鱒のムニエルをいただくのが、好きだった。
昼のカツ丼や、洋食のフォンを使った極太ラーメンも、思い浮かぶと無性に食べたくなる。
昭和11年に創業した軽井沢の「レストラン菊水」は、今年、旧軽井沢から塩沢に移転した。
厨房には二代目が一人で、サービスも一人でこなしている。
「虹鱒はお出ししたいのですが、仕込みに手間がかかるので、厨房の人数がいないとお出しできないのです」。
旧軽時代に、二代目が申し訳なさそうに言っていたことを思い出す。
もう、カツ丼も虹鱒もラーメンもないけど、頼んだトマトポタージュは昔そのままの温かみに満ちて、若鶏のカツはデミグラスソースに品があり、昔ながらの洋食屋の矜持に満ちていた。