沖縄から軽井沢に向かった。
Farm to Table 2018 第三回になるこのイベントに参加した。
今回は、軽井沢のレストランを中心に、10人の料理人が10皿の料理を作る。
食材はすべて信州、ペアリングのワインや日本酒も信州で、生産者の方も一緒に食べた。
冬の足音に耳を澄まし、森の息吹を味わい、肥沃な大地の暖かさを感じ、清流の香りを嗅ぐ。
皿が進むごとに、滋養が満ち、浄化されていく。
小谷野豚は、生ハムとなって熟成し、岩茸やリコボウが精気を放つ。
ニオイコブシは、茶葉のような精錬された香りを漂わせ、信州サーモンは野沢菜の香りを自らの体に溶け込ませて、食べた人間を川の中へ誘い込む。
シェーブルとシャルドネは共鳴し合いながら溶け込み、南高梅の葉っぱを嗅ぎながら飲む天然キノコのスープは、精神を清める。
パイの中で、カブは自らの命を爆発させ、チョウザメは、淡い滋味を膨らましながら、肝や軟骨の魅力も伝えくる。
地鶏の真田丸は、体に溜め込んだ旨味のエキスで舌を包み込み、信州の鹿は、心を癒す黒文字の香りを伴いながら、猛々しい鉄分の滋味で心を鼓舞する。
ローズマリーを積んだ時の香りが弾けるジェラートで目を覚まさせ、紅玉の力強い甘酸っぱさが、顔がほころぶ。
「なぜ俺は、この場所でこれを食べるのかを考えるのが料理だと思うんです」。
と、職人館の北沢正和さんがいう意味が、ここでは生まれていた。
一皿一皿の中に、時間と空間が、たっぷりと詰まっている。
そして、食材への愛が深い料理は、人間の気を向上させることを知った。