高知の夜の締めは、「屋台安兵衛」の餃子に決まっちゅうき。
屋台には、毎晩行列ができるぜよ。
並んでも、安兵衛の餃子を食わにゃ、帰れません。
ついでにおでんも、食べてしまうけんどね。
ついでにラーメンも、食べてしまうけんどね。
小さい餃子は、皮が薄く、パリンパリン。
包みたて極薄皮を、たっぷりの油で揚げ焼きするから、パリパリサクサク、パリンパリン。
このパリンパリンがくせになる。
いくらでも食べられてしまう危険な奴。
具はキャベツ、ニラ、にんにく、生姜、豚肉と見た。
ひき肉以下、具は極々微塵で野菜優勢。
餡は肉が主張していない、オーソドックスな日本スタイルで、その餡の大人しさとパリンパリンの皮の凛々しさのコントラストがいいのね。
ゆえに、パリンパリン、ふわりとなくなるわけで、もう止まらん。
箸を持つ手が加速して、だれか止めてと言いたくなる。
安兵衛は、昭和48年、初代が屋台を開いたのが始めである。
たっぷりの油でちいさい餃子を、一旦スープを入れて蒸し、揚げ焼きをするという、他にはない珍しいスタイルで人気となった。
だが先代が亡くなった時には、レシピが残されていなかったという。
息子さんや従業員が味の記憶を辿り、再現したのが今の安兵衛の餃子である。
餃子は、作り置きせず、常に包んでいる。
実に手早く、測ってみると、一つ3秒で包んでいた。
これくらいの手練れになるには、一年かかるという。
さらに焼き手も熟練が必要で、特に屋台の場合は、湿度や温度、季節によって水分などが常に変化するため、最初の蒸し加減、その時間を感じるのが難しいという。
一見簡単なようで、実は包みと焼きという二つの技があってこそ、この美味しさは生まれるのである。
高知市内に「安兵衛」は三軒あるけど、焼きあがった瞬間外気にさらされてよりパリンパリンになる屋台が、一番おいしい。
そう店主もいっとった。
小さき餃子に秘めた、職人の技の話を聞いていたら、また食べとうなった。
すいません。餃子お代わり。
あっ、ビールもね。