《似ても似つかない》
松屋の開発部員は、なぜマイナーなジョージア料理、シュクメルリに目をつけたのだろう。
ジョージア料理専門店というのはないので、疑問が残る。
恋人がジョージア人だったのか?
ロシア料理店で見つけたのか。
とにかくこれはいけると、思ったのだろう。
狙い通り大ヒットした。
ニンニクとホワイトソースにチーズという、魅力的かつわかりやすいラインナップは、ジョージア料理というほとんどの日本人が知らないデメリットを凌駕した。
写真映えもいい。
しかし本物は2枚目の写真である。
松屋のそれが、チキンチーズグラタンと、いかにもサイゼリヤにありそうな料理であるのに対して、真のシュクメルリは、チーズもホワイトソースもの入れない。
いわばグリルチキンのニンニクミルク風味である。
この料理が生まれた山岳地方では、鶏を焦げ目がつくまでこんがりと焼き、取り出して、肉汁と脂が残つたフライパンに、お湯とニンニクをどっさり入れて完成である。
ミルクを入れて乳化させるようになったのは、この料理が都会に降りてきてからであるという。
それは、うまみ攻撃の日本版シュクメルリより素朴で、 しみじみとしたうまさがある。
松屋のそれの方がうまみは強いが、毎日食べることはできない。
しかし本場のシュクメルリなら、飽くことなく、毎日食べられる。
家庭料理とはそういうもんである。