朝陽を浴びながら風呂に浸かり、本を読む。
ベッドに沈みながら、本を読む。
テラスのブランコに揺られながら、本を読む。
畳にゴロンと横になりながら、本を読む。
ウィスキーのお湯割りをちびちびやりながら、本を読む。
本棚に囲まれたソファーで、淹れたてコーヒーを飲みながら、本を読む。
遠く山々を臨みながら、テラスで本を読む。
辰巳芳子さんの料理書、中村好文さんの建築の本、日高敏隆さんのの生物論、タツノオトシゴ図鑑、村上春樹のエッセイ、クリコさんの希望のごはん、和辻哲郎さんの古寺巡礼、グレイス・ベイリーさんの短編、湯川秀樹さんの詩と科学、ターシャ・テューダーさんの人生観。
片っ端からページをめくり、記録し、疲れたら、空を漂う雲を見る。
まぶたを閉じて、うたた寝してもいい。
ここにはありあまる本と、ありあまる自由な時間があった。
強羅の宿、「箱根本箱」にて、1万2千冊の本と静寂、温泉、かけがえのない時間に抱かれて。