迷わず買った。
米原駅の駅弁は、「湖北のはなし」が有名だが、目もくれずに買った。
「おかかごはん」弁当である。
おかかごはんに900円は、いささか高いと思うが、迷いはなかった。
だって変だもん。
ふたを取れば、一面おかかの花畑。
おかずは、焼きたらこ、枝豆、京風だし巻き卵、鶏の煮物、黒豆、葱と油揚げのぬた、煮サツマイモ、梅干し以上。
あきらかにご飯の量に対して、おかずが少ない。
つまりこの作者は、おかずでご飯を食べさせようとはしていないのである。
おかかご飯をひたすら食べるためだけに存在する弁当であり、おかずはあればあったでいいと割り切った、潔い弁当なのである。
だから焼き魚や蒲鉾や海老を入れて、客に媚びようとする姿勢が一切ない。
ボクは、おかずを箸休めとして、ひたすらおかかご飯を食べた
わずかに入った細切りの紫蘇が香って、いいアクセントとなり、おかかご飯が飽くことなく食べ進む。
おかかがかかった上部だけ食べてしまうと、ただのご飯になってしまうので、うまく散らしながら、慎重に配慮して食べた。
ただしものがおかかだけに、うまく食べないと、膝の上にこぼれ、隣席にも飛散してしまう。
気を使うのは、その一点だけである。