金沢「ラ・トネル」

皿には、自分のサインを書け

食べ歩き ,

「自分の皿には、自分のサインを書け。自分が育ち体験してきた味を、皿に反映しろ」。
修行先のフランス北部、ベルギー国境に近い二つ星レストラン、「ラ・グルヌイエール」のゴティエシェフに影響を受けた言葉を聞くと、砂山シェフはそう答えて、目を輝かせた。
葡萄畑の真ん中に建つ、レストランである。
外にも店内にも舞踏の蔓が伸びて、葉が生い茂り、実りを迎えた葡萄が下がっている。
おそらくこんなレストランは、世界に一つではないだろうか。
緑を目に宿しながら、陽光を浴びながらの食事は、心身ともに伸びやかになる。
野菜を多用した料理は、そんな心に優しく沿う。
若くして、師匠と同じ星の数をもらった砂山シェフに、重圧はあるだろう。
しかし料理は、そんな気配は微塵も感じさせずに、自然な歌を歌っていた。
写真は2017年「ラ・グルヌイエール」でのヤァ!(村山シェフは向かって左端)と、
金沢の「ラ・トネル」でのヤァ!(村山シェフは向かって右端)