《香りの命》
40数年という長いビール人生(少しウソ)で、最高の時間だった。
京都府与謝野町にあるポップ畑の真ん中に、テーブルをお置き、そのポップを使ったクラフトビールを飲むという、粋な計らいである。
しかも日本ビールジャーナリスト協会代表であり、京都与謝野酒造社長でもある、藤原ヒロユキさんが同席していただいた。
藤原さんは与謝野町に移住してビール作りをされている。
「あっビール」
もぎたてのホップを剥くと.黄色い粒がが現れる。
それがまさしくビールの香りで、嗅いだ瞬間に目を細める芳しさを放つ。
ポップはもいだ瞬間から劣化し、1日で香りは弱まり、2日も立つと香りは半減以下になるという。
普通はホップは、乾燥させ、砕いてペレットに加工して使う。
つまり2回加熱されるわけで、その過程で、多くの香りが損失する。
一方与謝野町のホップは、急速冷凍し、真空にされて使われる。
こうして生のポップを使用するのは珍しく、日本のクラフトビールの99%は、ペレットを使っているのだという。
生きた香りに満ちたビールなのである。
しかもヨーロッパでも珍しい手づみなので、傷つかず、未成熟の実を刈ることがないので、香りの濃度が高い。
そんなビールを、ホップ畑で飲む。
飲む。飲む。
ビール好きにとってこんな幸せは、他にあろうか。