「お昼どうすんですか?」
「いや、函館来たらどうしても食べなくてはいけないカレーがある」。
「付き合います」
「いや、付き合うと言ったって、そんなにおいしくないよ」。
「え? おいしくない?」
「そう。でもどうしても食べなくてはいけない」。
ということで、4人してカレー屋に向かってタクシーを飛ばした。
「タクシーで「小いけ」にいく人初めてです」と運転手さんに言われながら、
タクシーを飛ばした。
昭和22年創業の「小いけ」である。
僕はここのカレーを、「小学校の林間学校で、最後の日に食べたカレー」と呼んでいる。そんな絶滅危惧種なのである。特徴として
1昭和の匂いを漂わすが、それにしては辛い。
2タマネギや豚肉らしきものが点在しているが、嬉しいことに、具の存在感がない。
3カツカレーは、最初からカツにたっぷりカレーがかけられているため、食べ方の工夫をする余地がない。
4ナプキンを巻きつけたスプーンとフォーク。福神漬に紅生姜と正当差がある。
5「インドカレー」と名乗るが、香りよりうま味を優先させた、ご飯のためのカレーである。
6たっぷりの福神漬けや紅ショウガで汚しても、ソースをかけても、その侵入をものともしない強固な味わいが確立している。
ということで、途中からカツの上にソースをかけ、食べてやった。
あっ。関西風に生卵をかけてもよかったなあ。