ある人が終電に乗っていると、目の前に酔っ払いが来た。
つり革にぶら下がりながら、下を向き、うめき声を上げている
これはもしやリバースかと、立ち上がろうと思った瞬間にそれはやって来た。
軽いリバースだったが、飛沫が、靴やジーンズの裾に飛び散った。
後から隣に座った女の人にも、かかった。
「もう次の駅で降りなさい」
「迷惑だ。この女の人にもかかったじゃないか」と、怒鳴るように言うが、彼は、「すいません、すいません」を繰り返すだけで、動かない。
隣の女の人は、ショックのせいか、うつむいて放心状態である。
「ほら彼女も大変なことになってる。降りなさい」
「すいません。すいません」。
「すいませんじゃない。降りなさい 」
そして彼女にも言った。
「あなたもこいつに何か言ってやりなさい」。
すると彼女はようやく口を開いたという。
「す、すいません。 私の兄なんです」。