生まれ年のマディラ酒を飲んだ。
1955年。
グラスを傾けると、チョコレートやシガー、枯葉やはちみつ。
様々な香りが立ち上る。
まろやかさを増し、円熟の陰りをみせるが
どこか青さや微かなトゲもあって、
まだまだ若い。
樽香も、こなれてはいない。
100年以上経ったマディラは、土のようになるといわれる。
それは揺るぎなさと逞しさ、博愛の温かさか。
半世紀以上生きても、まだ小僧っこ。
自らを言い当てられたようで、複雑な思いを噛みしめながら、
とろりとした液体を舌にからめた。
大塚にて。