見た目も焼き方も、大きく変わってはいない。
しかし食べると、まったく違うのである。
「レカン」高良シェフの焼いた鴨肉は、エレガントさと妖艶が入り混じる中より、血が湧き上がってくる。
「バードランド」和田さんが焼いた鴨肉は、噛んだ瞬間口の中で野生が弾け、噛め噛めと叫ぶ。
妖艶と血に誘惑されるか、内なる野性をたぎらせるか。選べと言われても僕はできない。
アプローチは違えども、理想の姿を明確に描き、見事にその通りに焼き上げた、技である。
鴨への敬意への結実である。
そしてどちらも、僕らの心を勃起させるのである。
ああ、赤ワインを大至急!!
その後に高良シェフが、「今度は生っぽく仕上げたので、少し血を湧かせてソースにします」と言って焼上げた鴨も、脳天を殴るのであった。
岐阜「あかね屋」にて。