僕らが近づくと

食べ歩き ,

僕らが近づくと、好奇心おう盛な子ヤギが寄ってきて、窓から顔を出した。
「ミェ〜、ミェ〜」。
まだ羊らしい鳴き声に達していない愛らしさが、胸をくすぐる。
なにかな、なにかくれるのかな? あそんでくれるのかな?
落ち着きのない小さい目をくるくると動かしながら、こちらを伺う。
大倉山「やぎや」。
いまから、昨日まで君たちが飲んでいた乳をいただくんだよ。
人間の都合で、チーズという形にしたけど、きっととてもおいしんだ。
それは、とても味が清冽で、口に含んだ瞬間、するりと消えていった。
静かな静かな甘味だけを残して、消えていく。
澄み渡った命の清らかさが、体の細胞に染み渡り、
ふつふつと、ふつふつと、心が自然に戻っていく。
そんな時間を与えてくれる、シェーブルだった。

 

閉店