色気がある餅

食べ歩き ,

餅と色気は縁がない。
しかしその餅には、色気が宿っていた。
もち米30kgを粉にしてから餅を作り、そこにトリュフを埋めたというトリュフ餅である。
もっちりと歯が包まれれば、もち米の甘い香りが広がり、さらに噛めばトリュフが崩れて、色香が漂いだす。
噛めば噛むほどにそれは膨らみ、餅の甘みと抱き合う。
餅の親しみやすさというか、素っ気のない、実直な味わいに艶が混じる。
なにかそこには、すっぴんのスレていない田舎娘が、素朴な笑いを投げかけながら、その奥から色気が滲み出して、複雑な気持ちにさせられるような気分があって、心がかき乱される。
食べ終わって心を平静にし、黒龍「石田屋」をすする。
するとどうだろう。口から消えたトリュフが蘇って、焦らす。
それは、ありとあらゆる食材の本質を知っている、森さんならではのいたずらなのである。
大阪「カハラ」にて。

「カハラ」の全料理は、

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