屋久島のカラスミ

食べ歩き ,

子供が生まれた時、学生時代に訪れた屋久島群が思い浮かびました。あそこでどうしても子供を育てたい。そう思って移り住んだのです」。
群馬出身の秋本さんは、築地の仲卸で働いていた。
カラスミなどを作る仕事だったという。
屋久島に移り住んでからは、漁師や観光施設員などをして生活をしていた。
昔取った杵付でカラスミを作ってお世話になった方に配ると、みな大変喜んでくれた。
そこでカラスミを作り、販売することを決意したのだという。
山から冷たい風が降りてくる永田地区を選び、作り始めた。
「干しが甘いとうま味が出てこないんですが、この山おろしが見事にいいカラスミを育ててくれるんです」。
鹿児島からぼら子を買い、塩漬けし、洗い、乾燥させる。
なんと塩も手作りである。
海水をポンプで引き上げ、ろ過し、炊き上げる。
ウミガメが産卵する砂浜の小さな小屋で塩を作る。
塩漬けにしたのち、普通は水で洗うが、秋本さんは屋久島焼酎で洗う。
「屋久島には、本坊さんの屋久島や三岳という素晴らしい焼酎があるじゃないですか。これを大量に使って洗ってやるんです」。
そして、屋久島の澄んだ空気と太陽と山おろしにさらす。
秋本さんの作るカラスミはきれいである。
色もオレンジで、茶色の部分がほとんどない。
味もきれいで、雑味なく、純粋な濃いうまみだけが舌に乗ってきて、酒を呼ぶ。
「屋久島でもぼらは獲れるので、今漁師や漁連と話してます。将来は屋久島のぼら子100%にするつもりです」。
そう話す秋本さんの目は、彼が作るからすみ同様混じりけがなく、澄んでいた