ワインを口に含んだ瞬間、宇宙とつながった。

食べ歩き ,

ワインを口に含んだ瞬間、宇宙とつながった。ワインを口に含んだ瞬間、土に戻っていった。

おいしい、香りがいい。なめらかな、味が深い。
そんな人間が発するどの言葉も似合わない。
自然の、自然のままの呼吸が伝わる味わいは、優しくもあり、豪胆な怖さも秘めている。
それこそが自然なのだよと、教えてくれる。
飲むほどに土を感じ、風や太陽を身近に思う。
心が安らぎ、素朴な料理が食べたくなる。
アメリカ人ながら、グルジア式宴会に惚れて移り住み、「フェザンツ・ティアーズ」というワイナリーを作った、ジョン・ワーデマン氏は言う。
「ワインを作っている普通の農民に、こんなおいしいワインを作るなんて、才能があるねと言うと、大体同じ言葉が返ってくる。
いや自分は真ん中にいるだけさ。土が作って神が与えたものを自分が少し手を加えるだけでこうなる。自分に才能があるわけじゃない。自分は生かされ、間にいる存在。あくまで媒体、伝達者で、後世に伝えていくだけさ」。
グルジアワインというと「醸し発酵」や無農薬、手作り、土中壺内発酵熟成、珍しく古いブドウ品種など、特殊なことが話題になるけど、最もこのワインの味わいを生み出しているのは、きわめて人間的な、自然と祖先への愛と敬意に満ちた民族が作っているという点ではないだろうか。 

写真の人物は「アワ・ワイン」の作り手ソリコ氏