うどんの街のうどん

食べ歩き ,

大阪は、うどんの街である。
今は、いい蕎麦屋も多くできたが、うどん屋の方がはるかに多い。
田辺聖子さんが「春情蛸の足」で、「昼のうどんを、ひたすらおいしく食べるために人生はある」と書かれているように、関東人では想像つかない愛着がそこにはある。
特にきつねうどんは、愛してやまない料理だという。
そんな大阪でも、最近讃岐系うどん屋が多くできている。
大阪うどんとは全くタイプが違うのだが、ほうぼうに人気店ができているらしい。その一軒である「うどん処 重巳」に出かけた。
ツヤと輝くうどんを持ち上げると、ビヨーンと伸びる。
そこで噛み切ろうとするとビヨーンと伸びる。
そんなコシなのに表面は柔らかい。
ふんわりとして芯に、コシがある。
だからふんわりしっこりを楽しみながらうどんをすする。
讃岐人にとっては、軟弱なのかもしれない。
大阪人にとっては、硬派すぎるのかもしれない。
しかしその中庸がいい。
どちらも好きだよと言いながらうどんをすする。
するとふっと小麦の香りが漂った。
ほの甘い空気が鼻をくすぐる。
すっかり気に入って、きつねうどんをお代わりした、
うどんの上でふっくらと膨らむ油揚げを、箸で割る。
次につゆをすする。
「はぁーー」。満足のため息が出たところで、うどんをすする。
時折油揚げを食べ、つゆをゆっくり飲んでは、うどんをひとすじ、ふたすじすする。
温まったうどんにビヨーンはなく、唇や舌にしなだれて、かすかに沁みたお出汁を忍ばせる。
その情を感じた心が、舌鼓を打つ。