「蕎麦 茂左衛門」

食べ歩き ,

優しい。
ぶっかけつゆを一口飲んで、心が和らいだ。
佐渡島はアゴだし文化圏だという。
そのアゴだしで作ったかえしである。
そばを手繰る。
捏ねがいいのだろう。
10割そばはしなやかで、歯を微かに押しかえす。
連れが頼んだのは、鬼くるみそばだった。
胡桃を自分ですり潰し、アゴだしをと混ぜてぶっかける。
少し食べさせてもらうと、アゴだしの優しさと胡桃の丸い甘みが、響き合う。
その蕎麥屋は、畑の中に古民家が一軒、ぽつんと建っていた
塀には、薄い青藤色に白字で「そは」と記された小旗が下げられていた。
そば食文化が深く根づく佐渡島の、「蕎麦 茂左衛門」である。
サクッと歯が入る、活きが爆ぜる稲田の刺身にかえしつゆをかけた皿や、甘海老の春巻、アゴだしを使った玉子焼、夏はぜの木の実で作ったジャムをかけた佐渡乳業のミルクムースも、素敵だった。