バンコクでビフカツサンドを食べるとは、思わなかった。
タイには、様々な牛肉料理があるのは知っているが、ステーキやシチューのイメージはない、
だが数十年前に、フランスはシャロレー牛を輸入して育て始めたのだという。
しかし暑い気胸では、なかなかうまい肉にはならない。
そこで今まで育てていた牛と交配して、新たな牛を生み出したのだという。
これが良かった。
脂のサシがくどくなく、旨味は強くないが、そのあっさりとした味わいが気候とあう。
ステーキも、独自製法のジャーキーも、牛頰肉の煮込みも良かったので、メニューを見てビフカツサンドを頼んでみた。
まずパンの薄さとカツの厚さのバランスがいい。
特製だというソースの、食欲を上げるパンチがありながら優しさのある味もいい。
たっぷりソースがかけられているのも気に入った。
そしてなにより、牛肉に香りがあって、トーストされたパンの中で生き生きとしているのが嬉しかった。
どれも日本で考えられたビフカツサンドという料理の精神が、きちんと成立している。
なんて細かく解説はしてみたが、そんなことはどうでもいいかもしれない。
一口かじりついた瞬間、「うまいっ」と、叫んで、鼻息が荒くなった。
それこそが「ビフカツサンド」なのである。
バンコク「K R B B」にて。